時を待つ心
心に響いた一節を紹介します。
何ごとをなすにも時というものがある。時―それは人間の力を超えた目に見えない大自然の力である。いかに望もうと、春が来なければ桜は咲かぬ。いかにあせろうと、時期が来なければ事は成就せぬ。冬が来れば春はま近い。桜は静かにその春を待つ。それはまさに大自然の恵みを心から信じ切った姿といえよう。
わるい時がすぎれば、よい時は必ず来る。おしなべて、事を成す人は、必ず時の来るのを待つ。あせらず、あわてず、静かに時の来るのを待つ。時を待つ心は、春を待つ桜の姿といえよう。だが何もせずに待つことは僥倖を待つに等しい。静かに春を待つ桜は、一瞬休みもなく力をたくわえている。たくわえられた力がなければ、時は来ても事は成就しないであろう。
時を得ぬ人は静かに待つがよい。大自然の恵みを心から信じ、時が来るのを信じて着々と信じて力をたくわえるがよい。着々とわが力をたくわえる人には、時は必ず来る。時期は必ず来る。(後略)
道をひらく 松下幸之助
時を待つ。春、美しい桜が咲くのは、そのために一瞬の休みなく力を蓄えているのだ。心静めて、静かに時を待つ。そして待っている間も不断の努力を惜しまない。それが外からは見えなくとも。自分は「春を待つ桜」になれるだろうか。その心持ちをまず持とう。