心配またよし
こころに響いた一節を紹介します。
何の心配もなく、何の憂いもなく、何の恐れもないということになれば、この世の中はまことに安泰、きわめて結構なことであるが、実際はそうは問屋が卸さない。人生つねに何かの心配があり、憂いがあり、恐れがある。
(中略)
憂事に直面しても、これを恐れてはならない。しりごみしてはならない。“心配またよし”である。心配や憂いは新しいものを考えだす一つの転機ではないか、そう思いなおして、正々堂々とこれと取り組む。力をしぼる。知恵をしぼる。するとそこから必ず、思いもかけぬ新しいものが生み出されてくるのである。新しい道にがひらけてくるのである。まことに不思議なことだが、この不思議さがあればこそ、人の世の味わいは限りもなく深いといえよう。
道をひらく 松下幸之助
最近聞いたフレーズで気に入っているものがある「ピンチ」になったら「チャンス!」と言うというのだ。この一節のように、安泰より、心配や憂いがあった方がいい。波風の立たないところには何の工夫も生れない。ピンチはまさにチャンスの入り口である。人の世を味わうとしよう。