“大空を舞う凧”のような青年を私はどう更生させたか
心に響いた一節を紹介します。
一九八四年以来、私は、サウスブロンクス、ブルックリン、ハワイ、サンディエゴの路上生活者の救済組織と協力して、彼らの意識変革を進めてきた。彼らが「自分は社会に貢献できる人間だ」という考え方ができるよう手助けをしている。
そこで、 (中略)路上生活を送っていたT・J を 私のセミナー参加者とのディナーに招待し、それまでの体験について話してほしいと頼んだのだ。
それまで十年以上、路上で暮らしていた当時の T・J は薬物中毒になっており、この時も「大空を舞う凧」のようなハイの状態だった。わずか一時間話しただけだったが、私たちはT・J の思考体系に大きな変化をもたらし、新たなアイデンティティを確立する戦略まで立てることができた。
二年経った現在、T・Jは麻薬中毒を克服し、路上生活から抜け出しただけでなく、積極的に社会に貢献する消防士としてテキサス州で暮らしている。しかも、二年前の自分と同じ境遇にある人々を助けるためのプログラムにも参加して頑張っている。
実は、彼らの抱えている問題は、ごく普通の人々が抱えてる問題とはほとんど変わらない。つまり、価値観やアイデンティティによって行動を制限されているのだ。
路上で暮らす人々にとって、「自由」こそが最も重要な価値観なので、路上で暮らす不便さがあっても、彼らは決して不幸ではない。社会のルールに従う必要がないので、堅苦しさから来るプレッシャーを感じることもない。しかも、路上生活者の間で友達の輪を築き上げ、自分らの才覚だけで生き延びている自分たちは「強い」人間だという思い込みがあり、路上生活のおかげで人間としての品格が高まっているとすら考えている。
友情と思いやりの気持ちがあれば、私たちでも、路上生活でいう過酷な現実と、社会復帰を助けるために果たすべき責任という課題との間の架け橋になれる。
忘れてはいけない。小さな努力の積み重ねが大きな変化を生むこともあるのだ。
アンソニー・ロビンズの自分を磨く アンソニー・ロビンズ
自分に置き換えて考えると、「こうあらねばならない」という価値観が見えない壁を作り、それによってみるべきものに目を向けない、今一歩踏み出せないということがあった。そしてその価値観やアイデンティティを尊重しながら新しいアイデンティティへと変化を促すことが大切だということを知った。