命を下す
心に響いた一節を紹介します。
自分がこうしたいと思うことを人に命じて、その命のままに自在に人が動くということは、事を運ぶうえにおいて、きわめて大事なことであるけれど、命になれて、いつの間にか命がなければ人が動かないということになっては、これはたいへん。こんな硬直した姿では、進歩も発展生まれないであろう。
たとえ命令がなくとも、以心伝心、命ずる人の意を汲んで、それぞれの人が適時適確にすすんで事を運んでゆく―こういう柔軟な姿のなかにこそ、かぎりない発展性が生まれてくる。
そのためには、命を下す前に、まず人のいうことに耳をかたむけることである。まず聞くことである。聞いた上で問うことである。そして、そこにわが思いと異なるところがあれば、その気づかざる点を気づかしめ、思い至らざる点の理非を説く。そうした納得のうえに立って、断固、命を下さなねばならない。命を受ける人に納得があるということは、その人の知恵がそれだけ高まったということである。わけのわからぬままに命に従わせていたのでは硬直する。
命を下すということは、ほんとうはそんな容易なことではないのである。
道をひらく 松下幸之助
傾聴の大切さは、至るところで耳にする。命令を下す際にも、相手の納得が得られているのとそうでないのでは、その意味合いも、その後の命令に対する動きも数倍も違ってくるであろう。時間はかかって一見遠回りにみえるかもしれないが、実は傾聴こそが、近道であり加速の要因である。傾聴を意識し、自身の力にしたいと真剣に思う。