旗を見る
心に響いた一節を紹介します。
射場に行って射撃の訓練をすると、遠い標的の下に監視に人がいて、発射のたびに旗を振ってくれる。その旗の振りぐあいで、ねらいが的を射たか、はずれたか、また右にそれたか左にずれたかが、一目でわかり、次のねらいを修正する。(中略)
考えてみれば、おたがいの毎日の働きについても、実はこんな旗がたくさん振られているのである。その中には、たとえば数字という形で、目に見えてくるものもある。しかし、目に見えない旗のほうがはるかに多いであろう。
その見えない旗を見きわめて、毎日の成果を慎重に検討してゆくところに、仕事の真の成長があり、毎日の尊い累積がある。
おたがいに忙しい日々ではあるけれど、目に見える旗はもちろんのこと、目に見えない旗をも、よく見きわめるだけの心がけを、つねにきびしく養っておきたいものである。
道をひらく 松下幸之助
人と会って話をする機会が多いが、この「見えない旗」にでくわすことが多い。しぐさや表情、言葉の端々、意外とこうしたところに相手の真意が隠れているものである。そこを読み取って、深堀の質問をすると、堰を切ったように話し始めることがある。
なかなか「見えない旗」をみつけるのは難しいが、そうした観察眼は養っていきたいものである。