求めずして

心に響いた一節を紹介します。
“苦しいときの神頼み”というけれど、おたがい人間、困って悩んでセッパつまれば、やはり思わず手を合わし、神仏に祈りたいような気持ちになってくる。どうかお頼み申します、どうかこの願いを聞き届けください―(中略)それにしてもおたがいに、あまりにも求めすぎはしないか。頼みすぎはしないか。頼りすぎはしないか。
手を合わすという姿は、本当は神仏の前に己を正して、みずからのあやまちをよりよりすくなくすることを心に期すためである。頼むのではない。求めるのではない。求めずして、みずからを正す姿が、手を合わす真の敬虔な姿だと言えよう。
これは別に神仏に限ったことではない。日々の暮らしの上でもあまりにも他を頼み、他に求めすぎてはいないか。求めずして己を正す態度というものを今すこし養ってみたい。(後略)
道をひらく 松下幸之助
まもなく新年、初詣の時期である。何気なくお願いごとをしてはいなかったか。頼まず、求めず、自らを正す。その機会であったのだ。手を合わす前に、人に頼む前に自分を振り返るその態度を一呼吸おいて考えたい。

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